女房のために書いた文学

 ”女房が、女房について、女房のために書いた文学の研究者”というタイトルが目次ページに見え、何のことだ? と興味がわいてきました。

 岩波書店のPR誌「図書 2010年9月号」で、丸谷才一が連載している『無地のネクタイ5』というものです。

 ”たわずがたり”という鎌倉期の自伝で、作者は後深草院二条という女房なのです。

 なるほど、女房が、当時の宮廷生活の実態をありのままに書いた、まさに、女房が女房の事を書いたものなんでした。

 読んだことはないので、この文章から推察すると、この当時は、自分の娘や妻を帝に、宮廷に勤めに出し、結果として、帝と貴族が同じ女人を共有する場合があったのだとか、そして、そういう場合には、帝はやきもちを焼いてはいけない決まりになっていたんだということでした。

 丸谷才一も、かつては、何かでたらめなもんを見るような感じがして、あまり、いい感触を持っていなかったのだが、岩佐美代子さんという、四歳の時から、照宮内親王のお相手をしていたという経歴の方の論考を読んで、考え方が変ったのだそうです。

 つまり、”廷臣は妻を帝と共有することで勢力を張ろうとし、妻である女房も其の辺の呼吸を心得た上で、公務として待寝と夫婦の仲という「二重生活」をおこなったにちがひない”という事に、その時代の女房の姿があるということでした。

 ”愛欲に加ふるに利害打算を持ってする照明を浴びたとき、急に生身の人間の物語になったのだから有難いことだった”と、丸谷才一は述べていました。

 儒仏到来以前の日本人のころを良く表している、”やまとこころや色好みのこころ”を、戒律という事を持ち出してくる国文学者の流れには、うまく味わう事が出来ないのだとも言っていました。

 なるほど、貴族と帝とは、そういう関係にあったのかと思う反面、平民はどうなっていたんでしょうか?

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