大気を変える錬金術

 「大気を変える錬金術」(トーマス・ヘイガー 著/渡会 圭子 訳/白川 英樹 解説/みすず書房 刊)というタイトルで、錬金術師を思いだし、その手の本なのかなぁという軽い気持ちでめくってみました。『ハーバー、ボッシュと化学の世紀』と副題がついていました。

 読みだすと、あの金を作りだすというあやしい錬金術のことではなく、窒素を作り出すという話で、最初は、何で、窒素がと思っていました。何しろ、空気中の成分のほとんどは窒素なんだからという思いがあったからです。

 それが見事に、覆されてしまいました。卑しくも、理科系出身なのに、実は、空気中にある窒素は、そのままでは不活性で、あまり役には立たず、実は、固定窒素という形でないと駄目だという事を知りませんでした。

 農業で、輪作の合間に、昔から、豆を育てるようにするのは、豆の根粒には、窒素を固定窒素にするバクテリアががいて、土壌に固定窒素を蓄えるからなんだとか。

 いや、全く知りませんでした。

 固定窒素がなくなると、植物は育たないんだとか。

 空気中にいくら窒素があっても、取り込めないんだということが分って驚いてしまいました。

 しかも、全生物は、窒素があるおかげで存在しているんだという事が書いてあります。

 微量であるが、生物の必須元素なんだという事でした。

 いやいや、驚きましたね。

 昔から、人糞や鳥・牛などの動物糞を肥料としてまくのは、この固定窒素を必要としていたからなんですね。

 何でも、1800年代の農業のやり方では、地球上を全部のうちにしたとしても、40億人分しか食料を確保できない試算があるということでした。

 でも、その当時より飽食になった人間の総人口が60億を超えている現代、では、どうして生きていけるんでしょうか?

 そこに、この本が追及した2人の発明者の話が登場します。

 結論からいえば、空気中の窒素から固定窒素を取る方法(空気から固定窒素をつくるハーバー=ボッシュ法)が発明されたからに他なりません。

 この発明は、化学の力で文字どおり世界を一変する半世紀をひらいたというもので、あまり、そんなに重要なこととは習った記憶がないので、読んでいて、すごいんだなぁと感心してしまいました。

 2人、フリッツ・ハーバーカール・ボッシュが、空気中から直接アンモニアを生成させ工業的に、大量に固定窒素を作ることを可能としたわけです。

 その2人の名前をとって、ハーバー・ボッシュ法と呼ばれるものは、鉄を主成分とした触媒を用いて、高温高圧の条件下で、窒素と水素を直接反応させてアンモニアを作る、工業的製法のkとを言い。

  N2 + 3H2 → 2NH3

という化学式であらわせます。

 このおかげで、私たちは、食料生産に必要な固定窒素を確保することができるようになり、今日の繁栄を築いたことになるわけです。

 ところが不幸なことに、このことは、兵器に転用される運命を持っていたのでした。

 つまり、爆薬の材料として用いられるのです。

 まさに、科学の発明が持つ、人類への平和な奉仕の面と、悪魔の面、そして、それを発明した人間の心にある欲望など、この本は、単に、世紀的な発明という事ではなく、ヒットラーの登場や戦争などという生々しい殺戮に、自分たちの発明が使用されてしまうという、希望と欲望とが渦巻く歴史を描いています。

 読んでいくと、どんどん引き込まれていってしまいます。

 パンを作ると思ったのが爆弾を作るなんて!


大気を変える錬金術――ハーバー、ボッシュと化学の世紀
みすず書房
トーマス・ヘイガー

ユーザレビュー:
窒素肥料の光と陰?高 ...
p.78-176がお ...
窒素から見た人類の過 ...
amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 大気を変える錬金術――ハーバー、ボッシュと化学の世紀 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル






野菜が壊れる (集英社新書 469B)
集英社
新留 勝行

ユーザレビュー:
「問題があるかもしれ ...
食を見直すきっかけに ...
ウソが多すぎる冒頭に ...

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by 野菜が壊れる (集英社新書 469B) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

根粒の窒素固定
楽天ブックス
商品副データダイズの生産向上のために日本土壌肥料学会博友社この著者の新着メールを登録する発行年月:1

楽天市場 by 根粒の窒素固定 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

この記事へのトラックバック