在ることのように長く短い

 「読書のすすめ 第14集」(岩波書店 刊)という小冊子が置いてあったので持って帰りました。数人の作家が、岩波文庫、読書について記述されています。

 そのなかでも、「在ることのように長く短い」(津村 記久子 著)は、著者が本当に読書が好きなんだなぁという事が伝わってきます。

 カフカ、中島敦、ロレンス・スターンの3人の作家を取り上げていましたが、ロレンス・スターンという人を知りません。

 ロレンス・スターンの『トリスタラム・シャンディ』という本は、全3冊という長い本で、上巻ですら400ページを超えるのだそうで、まず、これで私なら対象外になってしまうものでしょうが、トリスタラム・シャンディを中心とした登場人物すべてに寄り道をして話が展開されるんだとか。

 生きていることは、生まれたことの大きな悲嘆のうちにあり、その中で人間は、傍目から見たら笑ってしまうような悲喜劇を繰り返す、という事をトリスタラム・シャンディは誠実に描いているので、読むたびに、家に帰って来たような感覚になるんだそうです。

 そういわれると読んでみたい気もしますが、いかんせん長すぎますね。

 私が、なるほどと思ったのは、著者が最後に、トリスタラム・シャンディを引き合いに出しながら、『世界が自分を見はなしてしまったと思う時にすら、本を読んでいる間は、物語と作者はあなたとだけ対話している』という読書への思いを語った部分です。

 誰もが、同じ本を読んでも、実は、一人一人、この本は自分だけに向かって書かれたんだと思える、という点が読書の最大の存在理由なのかもしれません。

 吉本が、太宰を語る時に、いみじくも言っていた、自分だけに分るという、自分だけに話しかけてきてくれるという事を思わせる本がいい本だという事に通じているのでしょうね。

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