自身の不愉快な存在

 新潮社のPR誌「波 8月号」の書評で、青山 南さんが、『ブルースすら生まれない、途方もない荒涼』と題して、ウェルズ・タワー著”奪い尽くされ、焼き尽くされ”について書いていました。

 貧乏人でも成功できるアメリカンドリーム、中流家庭を絵にかいた”奥さまは魔女”のような平和な日常生活、そのアメリカの幻想が消えうせ、1980年代には、そのようなアメリカ社会の吹き溜まりのような所で生きるしかない人たちを描く作家が出てきたということでした。

 「ダーティ・リアリズム」と呼ぶのだそうです。

 今回書評している”奪い尽くされ、焼き尽くされ”も、妻に逃げられ、借金から逃げ、生活に行き詰った人間たちの話であり、まさに、「ダーティ・リアリズム」と言えるようなのですが、青山 南さん言います、似ているのはそこまでだと。

 「ダーティ・リアリズム」と呼ばれる作品には、何かブルースのような音楽が漂っている雰囲気があったのだが、この作品に感じるのは、『ブルースすら生まれない、とほうもない荒涼』だと。

 この作品の主人公たちは、ただただ、不機嫌であり、どうしてこんなに不機嫌なのか、自分自身でも分らないまま、身近な人間に当たり散らす。

 ”馬鹿にされるぐらいなら悪者になれ

という、作中人物の言葉を出し、作品の主人公達が、馬鹿にされていると感じ、その怒りを誰かに向けたくて、とりあえず身近な人間を標的にしているのだと。

 いや、ここまで読んで、久しぶりに、この本読みたいなぁと思ってしまいました。

 これって、今の日本、そのなままじゃないのかなぁって言う気がしました。

 ”山谷ブルース”で描かれた”山谷”がなくなっているのと同じなんだ。

 ブルースを生まない山谷が、日本中の都会を覆い尽くしているのかもしれないなぁという気になってしまいました。

 誰もが不機嫌で、政治や社会制度に夢を持てない。

 いらいらし、突然、人を攻撃する。

 そこには、『自身の不愉快な存在』がある。


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