金の卵たる中卒者諸君に捧ぐ

 昨夜、ETV特集で永山 則夫を取り上げた番組をやっていました。途中からだったので、最初は気がつかなかったのですが、以前に見たよなぁという気がしてきて、あ、再放送だと思いましたが、結局見てしまいました。

 連続射殺魔と三億円強奪、とが、あのころを思い出すと思い浮かびます。「無知の涙―金の卵たる中卒者諸君に捧ぐ」(永山 則夫 著/河出書房新社 刊)も出版されて、当時は合同出版から、買った記憶があります。

 『金の卵たる中卒者諸君に捧ぐ』というサブタイトルが、何故か、私を捉えて、無知とは何か、涙は誰のと思ったような気がします。

 「人民をわすれたカナリアたち」という、次に続く本も読んだような気がしますが、定かではありません。ただ、このカナリアという語句が妙に、頭にしみ込んでいます。

 その後出版された本は、買う事も読むこともなかったのですが、何故か、貧困が生み出す犯罪という事で、この初期の彼の本は、特別な気がしています。

 多くの兄弟姉妹の家庭に生まれ、絵にかいたようなばくち好きの父親と苦労する母親、しかし、子供を置いて逃げ出した母親。

 貧困と育児放棄の現実が、幼い兄弟に降りかかったわけです。

 最終的には、同じ兄弟でありながら、他の人は犯罪を犯していないという事が理由のようですが、無期懲役になったにもかかわらず、死刑判決となってしまったわけです。

 ふと、街を歩いていて、暖かくなったせいでしょうが、あちこちで、腰を下ろし、所在無さげにしている老人(もしかしたら若いのかもしれません)を見ると、また、貧困が、社会の日常に顔を出していることに、どうして? と思ってしまいました。

 永山則夫が残したものは、一体なんだったんでしょうか。

 またまた、無知の涙を読みたくなりました。

 一億中流社会が壊れ、新たなる貧困層が生み出されようとしている現在と、貧困から社会全体が発展していく途上で取り残された貧困層とが、何か違うのか、同じなのか、思わざるを得ません。

 決定的に違うのは、同じ様な犯罪者が出現したとしても、『金の卵たる中卒者諸君に捧ぐ』という存在はないという事のような気がします。


無知の涙 (河出文庫―BUNGEI Collection)
河出書房新社
永山 則夫

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