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zoom RSS 1/4の奇跡 善意に潜む恐怖

<<   作成日時 : 2010/06/02 18:20   >>

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 「1/4の奇跡[DVD付き]」(山元 加津子、柳澤 桂子、四方 哲也、新原 豊 著/マキノ出版 刊)という本があったので、なにが1/4なのかと思い読んでみました。

 この手の話は、どうも涙腺に響いてきて困るのですが、”仲良しでないと目は会わせられない”とか、”あるだけで心を動かせる”とか、一人ひとりの話を読んでいると、すごいなぁと感動してしまいました。

 著者の山元加津子さんは、身体障害や精神障害の人たちの通う学校に長年勤められており、ある一人の少女の出会いから、少女から託された思いを講演として行っているのだそうです。

 何が1/4かということなのですが、要するに、障害ということを背負った存在に関して、マラリアに対する研究の話が出てきます。すなはち、マラリアに感染する地方の人たちを研究したら、マラリアに対する抵抗力が強い人達が現れ、その人たちを見て行くと、マラリアに対する抵抗力が強い人が4人のうち3人いるとしたら、その強い人たちを出現させるには、1人の劣勢の人の存在が必要だということが分ったのだという話を引き合いに出していました。

 つまり優性遺伝子を受け継ぐ3人を作るには劣性遺伝子を引き継ぐ1人が絶対に出てくるのだということで、この劣勢遺伝子1人の存在が貴重なんだ、だから、障害を持った人間の存在も貴重なんだとと聞こえる内容となっていました。少なくとも私には。

 この部分を読んだ時、この研究自体を知りませんので、本当? かなということと、もし本当であったとしても、なにを劣勢と判断するかは分らないのでは、という気がして、下手をすると、これはヒットラーの逆ではないか、寄って立つ基盤が同じではないかという危惧を抱いてしまいました。

 疫学上の劣性であることと社会存在での劣勢であるということは関係ないし、そもそも、社会存在としての劣勢というのは、現在社会自体の構造的欠陥に由来するのであって、個人の肉体的精神的な状態とは別次元の話ではと思いました。

 これでは。障害を固定することになるではないですか。非障害者を存在させるために障害者の存在が必要? ということを言っているように受け取れてしまいますね。

 おそらく、著者は、どんな人にも存在価値はあるのだということを言いたいのでしょうが、なんで、こんなマラリアの研究を出してきたんでしょうか。

 1/4の奇跡を体現できない障害者は、どうしたらいんでしょうか?

 「マラリアに対する強さ・弱さ」は、あくまでマラリアという病気に対するもので、人間の存在そのものに言及しているわけでもないのに、あたかも、人間存在としての強・弱(こういう風に言うのは好きではないのですが)も同じであり、その強い人たちを支える弱い人として障害者を考えるという、どう考えても”ひどい”としか言いようがない、あやうい考えが善意の下に、おそらく無意識にでしょうが感じられて、後味の悪い思いをしてしまいました。

 障害者だから特別な力や感性がある、とか、それは本当だとか言うのは、社会的な構造からみれば、いわゆる貧乏な人や社会的な弱者の言うことはなんでも正しいんだという考えと近いと言わざるを得ないという気がして仕方ありません。

 本当の事かどうかは、障害者の方が言ったからとか、社会的弱者が言ったからというレベルの話ではないと思います。

 申し訳ありませんが、障害者の方の障害というものが、心身相関領域からみれば、”こころ”ということが大いに関与する方もいらっしゃるのは確かだと思いますので、その心身相関領域での障害の克服を考えるべきではないでしょうか?

 いわゆる健常者(何を指すのかあいまいですが)が感じられない何かを感じる力を持っている障害者の方もいらっしゃるでしょうが、よくよく考えれば、健常者と言われる人でも、そのような能力を持っている人はいるわけで、そういった意味で、障害者の方を能力の差として特殊化するのは間違いのような気がします。

 白川静さんではないですが、古代は、目の見えない人の特殊な力を信じていて、時には、わざと目を潰してそういう人を作ったのではというくだりがありましたが、人間として特殊化するのは、おそらく間違っていると思います。

 あくまで、人間存在としての弱者・強者は、社会構造の不完全さを表しているのであり、遺伝子の問題ではないと思います。

 どう考えても、著者が気付いていない、一見科学的なようでありながら、優性学を社会規定に持ち込む恐ろしさを感じてしまいました。

 マラリアの件に関して、どう言っているか、もう少し詳しく書くと、NHKの人体Vで放映されたアフリカの実例を挙げて、このように言っています。

【鎌状赤血球を持つ人達は、マラリアに罹らない。
そこで、鎌状赤血球を持つ人の兄弟を調べた結果、
1/4は、鎌状赤血球を持ち、障害をもつ人、
2/4は、鎌状赤血球を持っていても、障害がでない人、
1/4は、鎌状赤血球を持たず、障害もない人、
であることがわかりました。

マラリアが大発生した時、3/4の鎌状赤血球を持つ人達はマラリアに罹らず、
その村の絶滅を救ったのです。

2/4の鎌状赤血球を持っていても、障害がでない人達が存在する為には、
1/4の鎌状赤血球を持ち、障害をもつ人達が、存在してくれなければならなかった。
この村を救ったのは、1/4の障害をもつ人達ともいえるのです。


 このことと、障害の方の存在がかけがえのないものであるということとは、直接関係がない訳です。

 何故なら、障害を背負われている方も、そうでない方も人間存在としては等価であるからです。

 著者の意見では、健常者は障害者に支えらているから障害者の存在価値があると言っているように聞こえてしまいます。
 このように、マラリアの件を人間存在理由自体にあてはめるということが、とても無理であるばかりか、あまりにも、無思慮としか言いようがないといえます。

 1/4の存在を聖なるものとすることは、1/4の存在を忌むものに転化するのは容易で、一歩間違えば、存在を否定する理論にすり替わってしまいます。

 生きる理由・生存理由が分らないでもがく人は、健常者と言う人にもたくさんいます。

 障害自体に人間存在のあかしを求めるのは、あまりにも安易すぎますね。

 多くの障害者の方が、著者の活動で、何か生きるということを感じたという素晴らしさは、こんなつまらない理由づけなんてしない方がいいのではないでしょうか。

 そんな簡単に、本当のことなんてあるわけないじゃないですか。

 ついでに、マラリアの件を言えば、マラリアに対する手立てが、鎌状赤血球を保持しているかどうかだけであるならば、それは、医学の敗北を意味しているだけですね。

 何度も言いますが、鎌状赤血球を持っているいないかがなんで、人間存在の優劣になるんでしょうかね?

 この話が映画となり、各地で上映されているということで、絶賛されているようですが、本当にいいの? と思ってしまいました。

 著者のひたむきさが伝わるだけに、何で、遺伝子の話を持ち出したのか理解に苦しみますね。残念です。


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1/4の奇跡―もう一つの、本当のこと
三五館
入江 富美子

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本当におすすめです。 ...
映画を見てからでした ...
とっても素敵な本です ...
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