書籍の未来

 『書籍の未来』(高城 剛 著)という短いエッセイが、集英社のPR誌「青春と読書 2月号」(集英社 刊)に乗っていました。

 音楽の流通形態が変わった時の自己の経験を踏まえ、現在起こっている出版の流通形態の変革に対する、日本の出版業界の対応に危惧を感じているということが書かれていました。

 次の10年で、音楽業界に起こったことが出版業界に起こっても不思議ではない、ということを言っており、まさしく、その通りだと同感しました。

 しかし、2点ほど、そうかなぁと思った言い回しがあります。音楽の場合、ダウンロードに通信帯域の問題があり音質は悪くなる、という点で、これは、デジタル音源の問題とデータ圧縮の問題で、初期には、そういうことが考えられたかもしれませんが、現在では、デジタル処理の規格だけの問題であり、何ら通信帯域とは関係ないのではないかという点です。

 そして、この音楽の場合の通信帯域に符合するように、出版の場合には、レイアウトなどは紙より品質が落ちるだろう、と言っていますが、これは、まったく的外れの考え方で、どうして、このようなことを言うのかわかりかねる気がしました。

 解像度やコントラストなどの描画品質の問題は、レイアウトの問題でなく、物理的なディスプレーの問題であり、このレイアウトの質が落ちるというのは何を言っているのかよくわかりません。

 例えば、紙でない表示装置を使う場合には、文字間や行間などのあきなどレイアウトにかかわる要素は、紙と違った基準で行うべきだと言っているのならば、可読性などを考えれば、当然、その表示装置に適した方法をとるのが言いに決まっています。

 これを持って、レイアウトの質が落ちるというのならば、まだまだ、普及する前のテークオフ段階であるという認識がないような気がします。なぜなら、普及するにつれ、表示装置にあったレイアウトにすればいいだけのように思うからです。

 まだまだ、読書端末としてのディスプレーが、どういったものになるか、定まらない段階では、一律のレイアウトの手法は確立できないというものではないでしょうか? それを持って、レイアウトの質が落ちるとはいえないのでは。

 それから、音楽がダウンロードの時代になっても、CDやDVDがなくなったわけではないのと同じように、紙への印刷も、すべてなくなるわけではないということを言っていますが、その点は、全くそうだと思います。ただし、どこで誰が印刷するかは変わると思いますが。

 まぁ、このような技術的に言っている事を除けば、日本での音楽業界の対応のまずさが、日本の音楽業界そのものの衰退をもたらしてので、出版業界には、その二の舞にならないようにということが著者のエッセイの主眼であるようなので、それは、そのっとりだという気持ちですね。

この記事へのトラックバック