福田君を殺して何になる

 「福田君を殺して何になる-光市母子殺害事件の陥穽」(増田 美智子 著/インシデンツ 刊)が積まれていたので、誰だっけと思って手にとって見て、あぁ、これが、あのひと騒ぎあった、実名を出して、本人は了解していないという本かと思いました。

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 増田 美智子さんというフリーのジャーナリスト(ジャーナリストって何だ? と思ってしまいましたが)、被告と同じ年齢の人で、この事件に対して、何か違和感を持った所から、一体被告はどんな人であったのかという、世間にさらされた像ではなく実際の像をあかしたいという気持ちは、よく出ていました。

 確かに、報道される被告の姿は、残酷な犯罪をおかしたにもかかわらず、反省の弁もなく、ただただ被害者感情を逆なでするようなことばかりが喧伝されているという現状を考えれば、この間の裁判を含め、どうして、こういう流れになっているのか、被告の実像はどうなのかということを知るのは、死刑とか量刑とかを問題にする以前に、もっと知る必要があるのではないかと思われます。

 被告の生育環境、家族環境などを読むと、申し訳ありませんが、多少知恵遅れで、母親への渇望が根底に見え隠れする、おそらく自分を置いてなくなってしまった母親への恨みと憧れ、そしてそれが故の幼児性と希薄な存在意欲というものを感じてしまいます。

 どうして被告のような少年を生んでしまったのか、母親と父親との関係が大きいのだという気がしてなりません。

 彼の小学校、中学校時代の友人(?)や担任教師の話などを読むと、やはり、どちらかといえば、人に流されていく気弱な、少し、幼すぎる少年の姿が浮かんできます。

 被害者のご主人からの話も掲載されていましたが、死刑廃止云々という以前に、この犯罪が何であったのか、どうしてこのような事件が起こってしまったのか、このような犯罪をなくすにはどうしたらよいのかを考えるのが大事だということを言っているようで、全くその通りだと思いました。被害者のご主人の声を読んでいると、テレビで見かけるのとは異なり、なかなかしっかりとした考えをされているなぁと思いました。

 最初の弁護士の弁護の方法や安田弁護士になってからの弁護団の考え方、警察の対応などなど、やはり、私たちの知らない、極悪犯罪→極刑、あるいは反省→情状酌量というお決まりの路線に持っていこうとする力の中で、真実の姿を歪曲して報道するということも、ちらほら見え隠れしているので、この本のある部分には、納得するものがありました。

 ただし、実名で出版する意図がよくわからないのと、執拗に被告の少年の父親に取材を食い下がっている点に関しては、なんとなく、自分があの父親の立場だったら、父親と同じように言うかもしれないなぁという気になってしまいました。

 被告の姿が、こんなにも歪められて世間に伝わっていますよ、という気持ちが、ストレートに出すぎてしまったような気がします。

 このような境遇に置かれた子供たちは、結構いるのではないかよ言う気がして仕方ありません。著者は、そちらに向かうべきでしょうね。

報道されない警察とマスコミの腐敗
インシデンツ

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