猫を遺さはった

 「猫を遺さはった―悼亡詩」(野村 盛秋 著/早稲田出版 刊)は、猫嫌いだった著者が、猫好きであった妻に先立たれ、残された猫との関係を見直す中で、人生の考え方そのものが変わっていったということを赤裸々に述べているものでした。

 「寝る子」だから猫だなんて子供にいわれるぐらい、何もしないで、ただただ寝ころんで生きているだけの存在の猫というものに、嫌悪感を抱いていた著者が、妻の飼っていた猫と暮らす羽目になり、逆に、「ただ生きている」ということ自体が、素晴らしいことであると思うようになっていく、大げさにいえば、猫による人生の意義を考えさせられた人間の物語、日々のエッセイといえます。

 親鸞の悪人正機説について、お坊さんの話を聞きに行ったりしたが、納得した話をしたお坊さんに会えなかった、とか、同じ落語の演目でも、登場人物に対する思い・とらえ方が、演者によって異なるなど、ちょこっとしたことが、つづられています。

 惜しむらくは、一話一話は短い話なのですが、タイトルと本文が、連続して繰り返されるレイアウトになっているので、切れ目がなく、もう少し、体裁・構成に工夫してあればよかったのにという感じがしました。

 それでも、一人でも、猫嫌いが猫好きになり、猫によって人生が変わったとするならば、うれしいものです。

猫を遺さはった―悼亡詩
早稲田出版
野村 盛秋

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