楽しい仕事

 『楽しい仕事』という題目が目にとまりました。朝日新聞出版のPR誌「一冊の本 10月号」です。”目白雑録(ひびのあれこれ)”という、作家・金井 美恵子さんの連載するページです。

 目白に住まわれているみたいで、先日の衆院選挙の最終演説日に、池袋で麻生鳩山両陣営の演説が催されたときに、上空を乱舞するヘリコプターの騒音から話が始まります。なんでも、これほどのヘリコプターの騒音は、田中 角栄の時以来のことであると言っています。

 この騒音から始まり、報道のヘリコプターが被疑者を乗せた車を、追いかけていくことに、何の意味があるのかと苦言を呈しています。

 確かに、私なども、上空をヘリコプターが、バリバリと音をたってて何機も旋回しているのをみると、つい、何が起こったんだろうと、しばらく見上げるときが結構あります。そして、確かにうるさい。

 著者が言うように、被疑者を乗せた車は、たいていは、行き先が分かっているもので、それを上空から追い回すというのは何なのだろうという気になります。そう言われれば、警察署から検察庁に送致されるときや、戻ってくるときにも、報道のカメラが、びっしりと警察署を取り巻き、車が動き出せば、これまた、上空をヘリコプターが追い、その映像には、車を追いかける報道のバイクが何台も追っているという映像が流れたりします。

 このような報道のスタイルを見るにつけ、ある種の権力を感じざるを得ないし、国民の意思を意図的に方向付けしようとする国家+マスコミという醜い姿を連想しないわけにはいかないのかもしれません。

 著者は、最後の部分で、このようなマスコミに対し、一撃を加えていました。

 酒井法子が保釈を引き延ばしているということで、ワイドショーの記事紹介のアナウンサーが、”われわれの血税で一日千円ちょっとの食費を使っている。”と非難したことに対して、日本に住むほとんどの人間は、いざという時に一日分の食費ぐらい国が払って当然の税金は払っているとし、”自分の職業の成立する理由も考えないで、ほんとに卑しい奴らである。”と結んでいます。

 そうだよなぁという気持ちですね。ワイドショーが成立する与太話は、それを扱うことがなければ成立しないのですから、悪く言えば、泥棒の上前を撥ねる職業ともいえますしね。

 ところで、気になった『楽しい仕事』に関しては、この話の中で、覚せい剤のことに触れ、戦時中・戦後は、禁止されるまで、”ヒロポン”という名前で、結構使われており、この”ヒロポン”という名称が、実は、Philoponというフィロソフィーのフィロにギリシャ語の労働の意味をあらわすポンとの合成語何だと説明しています。

 もともと、戦時中の軍隊や工場で、疲労感や恐怖心を抑えるために用いられていたもので、軍需工場などでは、女学生がビタミン剤としてだまされて飲まされていたという話もあると紹介されていました。

 ようするに、戦時国策として、この手の覚せい剤が使用されていたということを棚に上げてはいけないような気がします。

 ヒロポンをうった人の話も出ていて、その時は、気分も高揚し、てきぱきと部屋の片づけなどをするのだが、薬が切れてからみると、確かに、物を動かしたり、掃除したりしたような跡はあるが、なにも、片付いていないのだそうです。

 つまり、非熟練作業の単純作業の繰り返しのようなものの疲労感や眠気をごまかすものだっただけで、全体的な判断を必要とする行動や労働を楽しくするものではなかったのだと言っていました。

 つまり、”ヒロポン”は真の意味での”ヒロポン”ではなかったということです。

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