おけがさまで生かされて

 「おけがさまで生かされて」(ペマ・ギャルポ 著 )は、テレビでたまに見かけるペマ・ギャルポさんの本です。

おけがさまで生かされて


 失礼ですが、ペマ・ギャルポさんのことは、チベットの人ということ以外は、ほとんど知らないというのが現状でした。

 副題にある”「おかげさまイズム」は21世紀の処方箋”でも分かるように、著者が日本で出会った「おかげさま」という言葉、その言葉を育んできた日本人の考え方を広めることで、この混沌とした世界に安定をもたらそうという提言となっています。

 この本は、大きく分けて、3部構成となっています。

 第一部は、著者の生い立ちを記したもので、幼少期から、日本に来日し、日本国籍を取得するまでのことが書いてあります。 1953年チベット・ニャロンに生まれた著者は、いわば領主の子息というような立場の子供だったのだが、中国軍の侵攻により、1959年インドへ逃れ、文化人類学者・地理学者でもある川喜田 二郎さんなどの力で、1965年に訪日し、ダライ・ラマ法王アジア・太平洋地区担当初代代表に就任するなど、幅広い活動をされています。川喜田 二郎さんのことも、実は、KJ法という発想法の発案者ということしか知らないでいたので、今回、恥ずかしながら、実は、文化人類学、地理学がご専門であり、チベット文化研究会の会長をされていることを知りました。
 この著者の経歴を知ると、私たちが、高度経済成長でひたすら邁進していた時期に、政治的な迫害と過酷な運命に弄ばれながらも、縁あって日本に来たことの不思議さを思わざるを得ませんでした。

 第二部は、著者が、日本で触れた、日本人の暖かさ、”おかげさま”という言葉に出会い、感激し、そして、現在の日本から、その言葉が失われてしまった悲しみを述べています。埼玉県毛呂町の人々の暖かい心配りに、著者の日本に対する思いの原点があるといえます。

 ”お元気ですか?”

 ”おかげさまで” 

というやり取りの中に、相手の立場に立つという思いやりが日常にあふれていたことを、切々と訴えています。

 最三部は、宗教戦争であるかのようにいわれている世界の戦争が、決して宗教戦争ではないこと、なぜなら、どんな宗教でも、殺すことなどは肯定していないばかりか、共存しようと述べているからで、まさしく、”おかげさま”という、共存、感謝に基づく行動こそが、世界平和に貢献すると書いています。

 著者は、国際化がアメリカ化であり、貧富の拡大、男女参画、単純な能力主義など、見直しをしないといけない風潮が蔓延していることに危機感を抱いています。

 中国により、蹂躙され、中国同化の圧政下にあり、チベット語の教育もままならない現在の”チベット”。もともと、中国の領土であったと手前勝手な理屈で、貧困層に落としこめられたチベット族の文化を、ひたすら守り継承していこうとしている著者に共感を覚えました。こうして、本を読んでみると、関口 知宏さんが行っている、中国鉄道大紀行の出発地点”ラサ”、そして乗っていた”青海チベット鉄道”。これらの鉄道の背景に、”チベット民族の悲哀”を感ぜざるを得ません。

合掌 by 遍照金剛

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